胎児


 −ヒトの胎児の脳は妊娠6ヵ月の終に88gだったのが出生時は370gになる。この3ヵ月の爆発的な脳の成長のため、胎児は母親の産道を通過できるぎりぎりのところ10ヵ月での出産となり、出産に十数時間を必要とする。このことはほかの脊椎動物や類人猿との大きな違いとなる。ほかの動物の赤ちゃんはすぐに歩けたり、母親の毛にしがみついて一緒に行動できたりと生きていく最低の能力をもって生まれてくる。しかしヒトの赤ちゃんはどうであろうか。ヒトの赤ちゃんが他の動物と同様に四足歩行(はいはい)したり、生きていくための最低の行動が出来るようになるのが10ヵ月、もともとヒトの出産には無理がある。これが体内妊娠10ヵ月、体外妊娠10ヵ月との説である。体内から体外へヒトの赤ちゃんは急な変化を体験し、母親から切り離されるのである。−(『子供の愛し方がわからない母親たち』斉藤学:講談社)
 この本を読んで「なるほどこんな説もあったのか」と納得した。まさにヒトは生まれたままでは、なにも出来ない無力の状態で生まれてくる。他の動物の赤ちゃんは生きていく能力をもって生まれてくる。その違いは大きく、ヒトは人に教わって始めて人になるということだろう。私が生まれて何の記憶もない最初の10ヵ月、私はどう育てられたのだろう。私が子供を生んで無我夢中の10ヵ月、私はどの様な子育てをしたのだろうか。この大切な時期を昔の人は無意識のうちに大事にしてきたように思う。この時期に私たちは人に愛されること、人を愛すること、絶対的な安心感、自分自身が今ここに居ることの存在感などなど、人として一番大切な部分が育つような気がする。